リレーエッセイ 小さなまほろばみぃつけた
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vol.05 人間回帰、列車の旅に思う [著]いわきやすお

今年の夏は40℃に達する地域もあり、日本列島が溶け出すのではないかと思ったほどである。猛暑、酷暑、炎暑と言われたが、ここにきてようやく秋の気配が漂うようになった。
お盆などの移動も暑さとの闘いで大変だったと思うが、飛行機、新幹線、高速道路を使った車など、その手段も便利になった分、情緒や旅情がなくなった。たとえば新幹線、東京から九州の博多まで5時間あまり、青森まで3時間で着く時代となった。車窓から見える山や川がビュンビュン飛んで行く。
2025年に開業が予定されているリニアモーターカーにいたっては、最高速度500㎞で、東京と大阪を1時間足らずで走ってしまう。こうなると、景色を止めて見ることが出来なくなる。自然が無機質なサイボーグになってしまう。

私が子どものころの夏休み、母の郷里の愛知県まで行くのに各駅停車で6、7時間かかった。車両に冷房などなく、窓を開け放し、止まる駅ごとの名前をメモにした。移動での楽しみは、停車する駅で買うお弁当や冷凍ミカン。駅売りの人を呼びとめ、陶器に入ったお茶と一緒に買ったのだった。
進行方向右側に見える富士山(今年、ユネスコの世界文化遺産に決定)、富士川、大井川、天竜川と渡り、浜名湖を通り過ぎるあたりから田舎にたどり着く実感を持った。丹那トンネルを何分で通り過ぎるかを測りながら、トンネル工事にかかった年数の長さに難工事だったことを知った。

めくれていく緑の丘や里山、畑に鍬を入れる人の姿などを目で追った。早く便利になったことを否定するものではないが、思い出時計を今一度戻して旅愁を味わいたい。寝台ブルトレやベージュ色のL特急電車が復活走行すると、鉄道ファンで満席になる。子どもたちの思い出づくり、情操教育に鉄道は関わっている。

夏休みとかの期間限定でもいいので、ブルートレインを走らせるというアイディアはどうだろうか。お父さんやお母さんと過ごすふれあい、21世紀になっても人間の郷愁DNAは変わらないと思う。お祭りが好き、旅が好き、電車に乗るのが大好き、そういう人間性が人と仲良くする、困った人に手を差し伸べる素地を作るはずだ。人間回帰に寄与するのではないかと思うのだが。
HPまんまるの木の今回のエッセイ「人間回帰」という題に衝撃を受けました。
テレビのニュースを見ていると、子どもの虐待、親殺し、 「だって、人間だもの…」とはいえない、本当に人間なの?というような悲しいできごとが増えました。
高度な能力と感情をもって、野生動物から抜きん出た人間の、向う先はサイボーグなのでしょうか。
妖怪好きの私としては、いまや妖怪さんのほうが人間らしい気が致します。
その昔「早く人間になりた~い」とベムたちが言ってたけれど、なんだか牛女は「早く妖怪になりた~い」 気分です!

牛女

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