のほほん散歩道

vol.06 カレーライスの話

文明開化以降、様々な文化・技術・習慣が日本にもたらされ、生活に影響を与えてきました。なかでも食生活は大きく変化してきましたが、いつの間にか日本の家庭料理の代表格となり 最近では<国民食>とも呼ばれる料理のひとつに「カレーライス」があります。

日本には「肉じゃが」同様にイギリス海軍(フランス説あり)からもたらされたとされ、横須賀や呉、舞鶴等の軍港地では<海軍のカレー>として根付いています。また、日本海軍の伝統として、「金曜日のカレー」という習慣が海上自衛隊に引き継がれています。これは洋上生活が長く続き、日時のメリハリを失いがちになるのを防ぐためとか、土日の休暇前の息抜きとか、諸説いろいろありますが乗組員の楽しみの一つでもあるようです。

また、各自衛艦ごとに自慢のオリジナルレシピがあり、他の艦の艦長や乗組員が訪れたときには食事時にカレーを振る舞い自分の艦のカレー自慢をするとか。

いまでは無いでしょうが、明治時代の洋食店では<カエルのカレー>というのがあったそうです。いまでは牛・豚・鶏が普通ですが、カエル(主に後ろ足)を使ったカレーで、味や食感は鶏に近かったようです。一説では<食通の味>といわれているとか。

さて、家庭でのカレーの話をしましょう。

私が子供であった昭和40年頃は今では当たり前の<レトルトカレー>というものが少なく、「大塚のボンカレー」があったくらいで、しばらくのちに「ハウス食品のククレカレー」が発売されましたが、一般家庭では鍋一杯にカレーを作るのが普通でした。

家庭で作る場合は今では普通に市販のカレールウを使いますが、当時はカレー粉も使われており、肉屋さんの中には10種類以上のカレー粉やルウを売ってました。

今では<激辛>ブームですが、大概は甘口か中辛くらいが普通で「ミルクカレー」なんてネーミングのカレーの素もありましたっけ。

具材は大概、ニンジン・ジャガイモ・タマネギ・豚肉が王道なのですが、家庭ごとに微妙に違う。野菜の切り方も大きくごろごろ使うタイプと小さくきるタイプがあるし、タマネギをそのまま使うタイプとアメ色になるまで炒めるタイプ、豚肉を軽く炒めて使うタイプに生のままから煮込むタイプ。もちろん牛肉で作るタイプもありますが庶民たる我が家では豚の細切れか豚バラ以外は使ったことがない。コンビーフが美味しいと教わり使ったことがありましたが、まぁ可も無く不可も無くだった気がします。

関西では牛肉を使うことが多いようですが、サーロインのような肉よりも細切れやスジ肉のほうが人気が高いようです。

さらに家庭ごとの<秘伝?の隠し味>というのがあって、リンゴを摩り下ろしたり、ハチミツ・パイナップルを仕上げに入れたり、ワインやコーヒーを使うレシピがあるとか。

ちなみに我が家の王道は、ニンジン・ジャガイモを2~3センチに切り、タマネギはスライスして水にしばらく晒して、豚バラ肉を軽く炒めてから煮込むタイプです。

そうそう、カレーといえば「キャンプの食事のテッパンメニュー(*1)」ですよね。

学校での課外授業でキャンプに行くと食事を協同・分担作業で作るわけですが、まぁ大概はカレーです。男女混合だったり男女別で班分けされての協同作業ですが、これがある意味面白い。我々男子は食べれりゃ良いからと<適当>にやろうするが、女子は並み居るライバル?の手前<母親ゆずり>をやりたがるものです。野菜の切り方が大きい小さいと揉め、「だってウチのお母さんの作り方はこうなんだから」「え~、ウチは違うもん、こうだもん」と口論が始まり、作業の手が止まってしまいます。

意外なのは、手際が良さそうな女子よりも普段は地味で目立たない男子に手際の良い奴がいて、本領発揮することが多いですよね。

一悶着を済ませ、ようやく出来上がったカレーですが、予想に反して?美味くてチョイと焦げた飯盒飯にぴったりで、二杯目は奪い合いで食べた記憶があります。

最後に私の<カレーの穴場>をご紹介します。まぁ、店によっては絶対に美味しいということはありませんが、一度くらいは試してください。

①区役所や市役所等の官公庁の食堂(飛びぬけて美味しいのはありませんが、素朴な味でハズレ無しだと思います。何よりも安い!)

②ソバ屋や中華料理店のカレー(カレー南蛮などのソバ屋のカレーは、和風だしで作られていることが多く、やさしい味です。同様に中華料理店も一味違います)

近年では<業務用>と呼ばれているレトルトカレーを使う店が増えており、なかには喫茶店でも自家製をうたいつつレトルトを出しているのは悲しいですね。


*1 定番メニューの意ですが、もっと硬いという印象が強い最近の流行り用語のようです。もともと競馬で硬い馬という意味でテッパンが使われていたとか…。

これまでの記事

トップに戻る
リレーエッセイ 小さなまほろばみぃつけた
のほほん散歩道