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vol.04 便秘の話

一言で『便秘』といっても人それぞれニュアンスが違います。「1週間出ていない」とか「ウサギのうんちみたいにコロコロしている」とか、いろいろな表現をします。今回は医療的な観点で、便秘についてまとめてみます。

『便秘』とは、「3日間排便がない」ことを言い、自覚症状として、腹部膨満、腹痛、残便感、食欲不振、吐き気などがあります。自覚症状を訴えられない認知症や失語症の方は、腹部膨満のみならず不機嫌、不穏、興奮などをきたしたり、ひどくなると腸閉塞となり、口からの便臭があり糞を嘔吐することもあります。ですから逆に、認知症の方の不穏、興奮を観た場合に便秘を疑うことも大事です。お年寄りの介護上も、どんな便が出ているのか、いつ出たのかをきちんと把握しておくことは、とても重要です。

便秘の原因

便秘の原因を大きく3つに分けてみます。1つは「薬剤によるもの」。2つめは「器質性の便秘」。つまり、大腸がんなどがあって便の通りが悪い場合。3番目は「機能性便秘」。つまり、腸管の動きが悪い場合です。 ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

まず「薬剤性便秘」は薬剤の副作用で便秘を来すことです。いろいろな薬剤が便秘を来しますので、薬剤を使っていて便秘をした場合は薬剤性便秘を考えてみましょう。(薬剤の例:抗ヒスタミン剤、抗コリン剤、カルシウム剤、アルミニウム剤、鉄剤、解熱鎮痛剤、抗鬱剤、抗精神病薬、モルヒネ等麻薬、脂質異常改善剤、ベラパミル、ジソピラミドなど)

次に「器質性便秘」です。代表的には大腸がんですが、その他、腹部手術後の癒着、腸炎後の癒着、腹部の大きな腫瘤なども腸の通りを悪くします。

最後に「機能性便秘」です。機能性便秘はさらに、①弛緩性便秘 ②けいれん性便秘 ③直腸性便秘に分けられます。①の弛緩性便秘は、腸管の運動や緊張が減弱し、腸内容物の通過が停滞し、水分吸収が増え、硬便が形成されます。その原因は、加齢や運動不足、不規則な排便習慣、不規則な食事時間、自律神経の異常を来す病気(糖尿病、パーキンソン病、レビー小体型認知症など)などがあります。②のけいれん性便秘は、主に精神的な緊張が原因で、S状結腸の過緊張によりおこり、便柱の狭小化、兎糞化を来します。③の直腸性便秘は、直腸へ来た便塊の刺激が仙髄の排便中枢にうまく伝わらなかったり、排便の反射がうまくいかない場合であり、高齢者で起こったり、若年者で排便を我慢し過ぎたりするとなることがあります。

便秘の治療

便秘の治療はまず原因を見極めることから始まります。原因が1の「薬剤性便秘」の場合は薬剤を変更し、2の「器質性便秘」であれば、器質性疾患への対応を行います。3の「機能性便秘」の場合、タイプごとに多少対処法が異なります。

①弛緩性便秘(一番多いタイプ) 食事をとると大腸に強い蠕動運動が生じます。これを胃大腸反射、十二指腸大腸反射といい、食後すぐに便意をもよおすのはこのためです。この反射を利用し、朝食後に排便に行く習慣を作るようにします。規則正しく食事をして、睡眠も規則正しくとることで自律神経の規則正しい働きを作るようにします。食物繊維は腸の蠕動運動を促進しますので、積極的に摂るようにします。食物繊維の多く含まれるものは玄米、サツマイモ、納豆、ゴマ、モロヘイヤ、きな粉、ゴボウ、ニンジン、玉ねぎ、キャベツ、プルーン、リンゴなどです。歩行運動などの運動で大腸の動きを助けることもよいでしょう。
②けいれん性便秘
ストレスによる自律神経の失調を抑えるようにします。基本は規則正しい食生活、睡眠時間、運動です。
③直腸性便秘
規則正しい排便習慣が大切。便意を我慢しないことです。

以上の生活習慣、食事療法、運動療法でもダメな場合は、薬物、いわゆる下剤を使うことになります。弛緩性便秘には、便の水分量を増やす緩下剤として、酸化マグネシウム(マグミット)、腸管の蠕動運動を促す薬にはパントシン、さらに強い薬は腸管を刺激する、アローゼン、ラキソベロンなどがあります。けいれん性便秘には、セレキノン、トランコロンなど。
直腸性便秘には、直腸を刺激する新レシカルボン坐剤などがあります。
難治性の便秘の場合はクリニックにご相談ください。

世田谷区太子堂にて神経内科・内科・訪問診療(在宅医療)クリニックを開院。
皆様のホームドクターとして、高血圧、高脂血症、糖尿病などをはじめとする
生活習慣病の予防・治療から、脳梗塞や難病などで寝たきりの患者の在宅療養支援まで、
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ながしまクリニック 内科・神経内科

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